Mic Sejaの小型高性能車シリーズ第16弾:トヨタ・スポーツ800(スタイル編) 2021-09-01公開版
2021.9.1
<トヨタ・スポーツ800>
1964年の東京モーター・ショーでお披露目されたトヨタ・スポーツ800(ショー当時は700CCの筈)は、赤と言うよりは柿色に近い印象で、数年前のモーター・ショーでお披露目されたパブリカ・スポーツが何となく格好悪く感じていた筆者には「欲しい」と一目ぼれさせるインパクトを持っていました。
<トヨタ・スポーツ800>
販売:1965年~1969年, 生産台数3131台(異説あり)
全長:3580mm、全幅:1465mm、全高:1175mm、ホィールベース:2000mm, 重量580kg
空冷水平対向2気筒790㏄、最大出力:45PS/5400rpm、最大トルク:6.8kgf/m
変速機:4速M/T, サスペンション:前ダブルウィッシュボーン、後ろ半楕円リーフ
*かれこれ50年近い昔の写真なので白黒でごめんなさい。
<台形クオーター・パネル>
スタイリング上の特徴として、(表現は別にして)「全体が翼断面」とか「空気抵抗低減スタイル」とか一般的には説明されているようですが、私の眼には「クオーター・パネルの切り方」が最大の特徴であり、当時世界を引っ張っていたイタリアのデザインにも無かったユニークなものだったと感じています。
横から見た時にクオーター・パネルが台形(上辺が狭く、下辺が広い)であることが、小さいながらも全体に「地に着いた」印象を与え、且つ、ロングノーズとリアボデーの絶妙なバランスを成している。1962年の東京モーター・ショーに出たパブリカ・スポーツでは「戦闘機のキャノピー」を模した平行四辺形型のクオーター・パネルになっていて何となくバランスが悪く感じられます。
<タルガ・トップ?>
タルガ・トップ形式だと言う人がいますが、その由来のポルシェ911タルガは1967年の発表であり、横から見たクオーター・パネルは台形と言うよりは平行四辺形(上辺が可変よりも後退した平行四辺形)であり、また色彩的にも金属色が選ばれておりトヨタ・スポーツ800とは似て非なるものです。
<アルファ・ロメオ・カングーロ>
クオーター・パネルが台形形状で有名な車にアルファ・ロメオ・カングーロがあります。トヨタ・スポーツ800が東京モーター・ショーに初展示されたのは1964年、ベルトーネ(ジウジアーロ)のアルファ・ロメオ・カングーロが同じく1964年のトリノ・ショーに発表されています。ボディ・サイズの違い、FRPと鉄板の材料差、少量生産とセミ大量生産の生産形態の違いなどありますが、ある意味大変似たデザインになっていると思います。
台形クオーター・パネル以外にも、カバーの付いたヘッドランプ周り、フェンダーの稜線の切り方、ロングノーズとリアボデーのバランスのとり方など共通点が多くみられます。デザイン上の自然な帰結なのでしょう。
<イタリア・デザインに対抗できるユニークなデザイン>
トヨタ・スポーツ800のスタイルは佐藤章蔵さんとの説が一般的みたいですが、台形クオーター・パネルに注目すると長谷川龍雄さんと信じるに至ります。時はほぼ同じとは言え、量産メーカーの開発ステップを考えるとジウジアーロに先行!日本が誇るべき素晴らしいスタイリングだと思う次第です。
<追記>
私の自動車遍歴の骨格的なモデルです。今回はスタイリングに焦点を当てましたが、そのほかの部分にも焦点を当て直して何編か記事にしたいと思っています。
<本稿完>
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