Mic Sejaの小型高性能車シリーズ第4弾:スバル360 2020-09-16公開版
2020.9.16
Mic Sejaの小型高性能車シリーズ第4弾:スバル360
<スイングアクスルからの連想ゲーム>
前回のスピットファイヤのスイングアクスルからの連想ゲームでポルシェ356⇒VWビートル⇒スバ360が思い浮かんできました。
何でスバル360が小型高性能車かと言うと、当時は日本の道路の舗装率はとんでもなく低く、ましてや高速道路などは建設中、信じてもらえないかもしれませんが軽自動車は一般道では40km/hに制限されていた!くどいようですが普通車の最高速度指定が60km/hの道でも40km/hが最高許容速度だったんですよ!そんな環境で大人四人が乗って、凸凹道に10インチの小径タイヤを添わせてドコドコと結構なスピードで走ってくれる。普通乗用車と言えばフレームシャシーに板バネの時代、凸凹があればスピードを落としてやり過ごしながら走るのが当たり前の時代に驚異的な高性能車だったわけです。
凸凹をドコドコとこなして走れるのは全輪独立懸架フル・インディペンデント・サスペンションだったからですが、そのリアはスピットファイヤでも手こずったスィング・アクスル!オリンピック以前の首都高の影も見えない東京は京橋の上で都電の線路に片側を載せた状態でフルブレーキをかけたスバル360が見事横転!スィングアクスルの初体験させてもらいました。
見るだけではまずかろうと自分自身でもスバル360のスィング・アクスル試験をやってみました。20km/hくらいで直進中に急に右へステアリングを切ってみました。路面はアスファルト平面。目立った凸凹はありませんでした。結果は見事左側面を地面にこすった状態で横転できました。右ドアを上方に上げて乗り越える形で車から降りましたが、周りの皆さんは「何をやっとるんだい」と白い目で激励してくれた記憶があります。
<Seja家の初自家用車>
Seja家の初めて自家用車が中古のスバル360.未だヘッドランプのリムがアルミの前期型。自分自身は未だ免許がなく、親父が手に入れたモノです。親父は購入してすぐにスプレーペイントを買ってきて屋根(樹脂製)をアイボリーに塗り替えました。結構見栄えが変わって新鮮に映りました。思えば自動車っていうのも「自分で手を入れて好みに改造して楽しむことが出来るんだ」と言うことが最初に刷り込まれた事例だったと思います。
(軽い)
Wikipediaによれば車重は385kgとあります。大人二人で持ち上げると横にずらすことが出来るし、ショックアブソーバーが緩んだ個体だと車体をユサユサ揺すって振動周期を合わせれば一人でも横にズラすことが出来ました。駐車中の学校の助教のスバル360を皆で揺すってかなり遠くに移動し先輩を困らせて喜んだり。
(広い)
前開きのドアをカパッと開けてシートに座り込むと柔らかなフロントスプリングも一緒に沈み込み、ガッチャとドアを閉めれば確かに密閉空間。ドアガラスも横スライド式でパネル部分は何もないので広々!リアシートに座ってフロントドア部に足を延ばすとそれは快適な睡眠空間でした。
(何も付いていない)
ワイパーはワンアーム、覗くとインパネ下にワイパーモーターがあって直接ワイパーアームを動かしていた記憶があります。インパネは簡素そのもの、基本的にはスピードメーターしかありません。初期のモデルはリアの車幅灯のスィッチがインパネになく車の後ろのスィッチを操作する必要があったとモノの本には書いてありますがさすがにSeja号はインパネのヘッドライトスィッチで点灯させていたと記憶しています。バックアップランプもないしヘッドレストもない。燃料計もなし。燃料計の代わりにバイクの様にリザーブコックがセンタートンネルについていました。
(ツーサイクル)
エンジンはツーサイクル2気筒。燃料は現代のチェーンソウの様に混合燃料。ヘッドと言ったってバルブも何もない上蓋みたいなもの。なんとマグネシューム製!親父は時々外してカーボンを落としてました。ツーサイクルと言うやつはアイドルを続けると掃気が不完全になるのかトルクが痩せ細ってしまうので、空ぶかしを一回してからクラッチをつなぐテクニックが普通でした。
(ブレーキ)
防水対策など何もなかったのでちょっとした水たまりに入ると、ブレーキドラム内に水が入りブレーキが効かなくなってしまう!水たまりに入った後はブレーキとアクセルを同時に踏むテクニックも必要でした。
<後期型>
1965年のマイナーチェンジで自動車らしく装備のグレードアップを図ったマイナーチェンジを機に我が家のSeja号も2代目に。色もライトブルーからアイボリィーに。リアにインテークのメッキモールが何となく立派に見えたものです。
(燃料)
「エンジンのクランク軸へ直接給油する独自の完全分離潤滑エンジンスバルマチック採用」でガソリンスタンドでも「自動車用燃料」の列に並べるようになりました。
(副変速機)
前年に第2階グランプリの400cc以下のカテゴリィーでフロンテやキャロルを打ち破った原動力の副変速機オプション付きでした。トランスミッションは1st:スターティングギア、2nd:加速ギア、3rd:クルージングギアの三速が標準ですが、ちょっとした登りでは3rdではトルクが足りず、2ndでは吹けきってしまうもどかしさ!これに副変速機を付けると一挙に前進6段・後進2段。3rdから2ndにシフトダウンしつつ副変速機をHiにシフトする!手が3本要る煩雑さはありましたが、気持ちよく峠道を走れるようになりました。
(年式)
当時は「年式」制度があり、我がSeja2号も購入日時からすれば65年式の筈ですが、IDプレートは64年式と打刻!日本グランプリのホモロゲーション目的で先行生産された個体とバレました。スペックは65年のマイナーチェンジ仕様なのにIDプレートは64年式。ホンダS600もS500グリル付きのS600が日本グランプリで走っていたけれど、当時はホモロゲーション大変だったんですね。
<フロアコントロール類>
リアエンジンの都合か、ヒーター・チョーク・燃料リザーバー切り替えはシフトレバーのすぐ後ろ、フロアトンネルの上の3本のレバーで操作していました。リアエンジンの場合、これらの操作をインパネのスィッチで行おうとするとコントロールをかなり長く・かつ方向転換を多数しなければいけないので、単純にフロアに置いたほうが合理的と言うことになります。自由度のないクラッチ・アクセルは普通の車と同じようにダッシュに位置していましたが。
と言うことで手近なリアエンジン車を覗いてみるとフロアにコントロールが見つけられました。因みに1910年頃のルノー(右上)はフロントエンジンでコントロールは全てインパネ・ダッシュ側に、(左下)初代ベンツはフロアにコントロールがあるようでした。
<本稿完>
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